
が届かない、国際電話に応答がない、責任者不在等の理由で回答が得られない、来日予定が急きょ来日しないに変更となる、など。
また折衝では、N号の所有権や保険金請求の所在についての文書一紹介には、これらを特定しうる回答が得られない、などとにかく話は進まなかった。
このようにN号の所有権の所在確認ができないままに、山形県庄内支庁は、対外経済サハリン保険協会にたいし、N号に関する損害賠償金額を二月二六日に次のとおり連絡した。
撤去費用 約一億八千万円
漁業被害 約五百万円
離岸堤復旧費用 約三千万円
油処理資機材費用 二六万九千円
合計 約二億一千五百二十六万円
確認書の内容
何一つ進展しないまま日時ばかりが過ぎていったが、四月二三日から二五日までの協議の結果、次の骨子の確認を交わすことができた。
(1)N号の所有権は、黒龍江北朕貿易有限責任公司(以下中国会社)が有する。
(2)N号の座礁場所および状況から一九九六年八月末までに撤去する必要がある。
(3)中国会社は、日本の法令上(民法七二〇条)中国会社にN号の撤去義務があることを認める。ただし、中国会社は、撤去作業を行う意思および費用を支出する意思ならびに財産を有しないと主張した。
(4)N号は、撤去費用を考慮すると財産的価値はなく、また復旧は不可能である。
などとなっており、中国会社はN号の所有権を有するとし、本船の撤去義務を認めながら撤去の資金も財産もないので、その意思はないという矛盾した内容となっている。これでもN号撤去に向けた一つの前進だった。
N号の撤去
この確認書を得た温海町では、N号撤去に大きく踏み切った。
平成八年五月、温海町は「N号の早期撤去について」の中で次のようにうたっている。
1. 第五次海岸事業計画による難岸堤設置場所であり、N号の放置は、公共事業の阻害、国土保全のためにも早期撤去の必要がある。
2. 事故発生後六カ月が経過、地域住民・漁業者から早期撤去、漁業被害等の補償が求められている。
3. 岩のり、アワビ、サザエ、カキ貝、その他海藻など魚介類の豊富な漁業海域であり、特に、アワビは、五年間にわたり放流している。コンクリートの破砕や砂の堆積も見られ、漁業生産活動に大きい支障をきたしている。
4. 庄内海浜県立自然公園であり県民の海として、名勝、観光面で重要な役割を担っており、景観が著しく損なわれている。
5. 国道七号から約八○材の至近距離にあるため、通行中のドライバーに交通事故を引き起こしており、今後も発生の危険が高い。
6. 九月になると台風シーズンとなり、撤去作業ができなくなるので、作業は六月から八月に限られる。
7. 現在、船体は大きく右舷に傾き、このまま放置すると船体の一部が海中に水没の可能性が大きく、そうなれば撤去費用、期間ともに
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